子供は、どこですか?どこにやったんですか?あの女捨てたって言ってたんすよ。捨てたって…



先輩は重い口をようやく開いた。


捨てたんじゃない。
預けたんだ。



施設にですか?
って俺が聞くと先輩は横に首をふった。

でも今頃は施設にいると思う。

そう先輩は言うと、やっとうつむいていた顔をあげ俺の顔を見たんだ。そして


赤ちゃんポストに入れてきた。

先輩はたしかに、そう言った。



結局、彼女はアレから病院にも行きたからず、ただ誰にも知られたくないから買い物などは先輩に頼み家から全く出なかったらしい。

で臨月になり自宅のトイレで出産したという。
そして彼女は先輩に言った。
早くどっかにやって。早くどっかにって。
叫んでたらしい。

先輩は、どうする事もできず、とにかくタオルで包み、気がついたら赤ちゃんポストの前だったって。そして中に入れて走って、タクシーをつかまえ帰ってきたらしい。



男の子だったって。


メガネ男は、そう言って亮をみつめた。

もちろん先輩は何も残してこなかったらしい。
自分の子なのに。
結局、母親は一度も子供を抱かなかった。