溺愛彼氏-いぢわる生徒会長-

 長谷川もあんな顔するんだ。
 とても切なそうな顔、愛しいものを見るような、そんな表情。
  でも好きになんてなれるのかな?
 確かに顔はカッコイイと思う。
 でも、私が知る限りコイツはドSだ。
 これはきっと変わらない事実なんだろうな。
 仮に本当に私のことが好きだとして、あの態度なんでしょ?
 じゃぁ、絶対素だよね。
 それよりこの気まずい間をどうすればいいのだろうか。
 長谷川は俯いて黙ったまま。
 一方私は、どう会話を切り出せばいいか分からないから話すことができない。
 俯いたままの長谷川が気になる。
 そんな私は長谷川の頬に手をあててクイッと顔を私の方に向かせた。
「―――っ!」
 自分でしたくせに驚いてしまった。
 だって、アイツは真っ赤な顔してたから。
 切なそうな顔の次はコレ?
「・・・可愛いー」
 素直な気持ちだったと思う。
「ちょ、ばか、見るな!」
 見るなって言われても見ちゃったんだもん。
 本当に、可愛い。真っ赤な顔を隠そうと必死なアイツが。
 そのまましばらく私は、長谷川を見つめていた。


【唯斗】
 こんな顔見られるなんてついてない。
 でも、頬を触った瀬野の感触が残ってる。
 ほんの一瞬の出来事なのに、忘れられない。
 それほど瀬野のことが好き・・・なんだと思う。
 結構無理矢理だけど、付き合ったわけで。
 それなら、名前で呼びたい、なんて思う。
「なぁ、付き合ってくれるんだよね?」
 さっきも聞いたけど、もう一度聞く。
 もしかしたら流されただけかもしれないから。
「うん?」
 首をかしげながら、でも俺達の仲を肯定してくれた。
 つい顔がニヤける。たとえ相手が好きじゃなくても、嬉しい。
 いや本当は好きになって欲しいけど。
 それはまた後でいい。俺のこともっと知って欲しいから。
 

  正直言うと、副会長は会長と付き合ってなければいけない。なんてまったくの嘘。
 そうでも言わないと断られると思ったから。
 騙したことは悪いと思う、でもこうするしかなかったんだ。
 でもこれがきっかけで、俺を好きになってくれれば問題ない。