少しでも俺達の距離を縮めたい。
 だから、名前で呼びたい、呼んで欲しい。
「ねぇ、唯斗って呼んでよ?」
「うへッ!?」
 なんとも言えない声を出す俺の彼女。
「呼んでくれないの?」
「いきなりは・・・呼べないよっ!」
 顔を赤くしている。可愛い。
 俯き気味に俺を見るから上目遣いなわけで。そこまでされるとね・・・?
「んー、じゃぁいい。俺は遊月って呼ぶから」
「えぇ!?」
 これもおかしいよな?
 苗字で呼ぶヤツと、名前で呼ぶヤツって。それに気づくのかねー、瀬・・・遊月は。
「うぅ・・・・私も呼ぶよー」
 どうやら気づいたようだ。
 でも呼んでくれるんだから、とりあえずめでたし。
「ほら、呼んでよ?」
「え・・・・・恥ずかしいから無理ぃ!」
「無理じゃないの」
 そういって床に座る遊月を抱きしめる。
「え!ちょっと離してよ!!」
 俺の胸の中で必死にもがく遊月。
 でも男の力に勝てるわけ無い。
 観念したのかもう抵抗はしていない。
「・・・ゆ・・・・と」
 遊月が何か言ったのは聞こえたけど、何かは分からない。
「何?もう一回言って?」
「・・・ゆいと」
 ドキッ・・・。
 やべー、嬉しすぎる。
 遊月が俺の名前を呼んでいると思うと、愛しくてたまらない。
「ね・・・?離して?」
 そんなに可愛く言われたら離すしかないんだろうな。
 俺はしぶしぶ遊月を離した。