俺は母親も父親も覚えていない。
今は兄貴と祖母と暮らしている。

確かに辛いと思ったこともあった。
参観日にはお母さんじゃなくておばあちゃん…

嬉しいけど複雑な思いをいつも抱えていた。
でも、実花に出会ってからの俺は変わった。

外に出なかった俺が外に出るようになり実花がやり始めた野球を追って俺もやり始めた。

いつもそうだった。
実花が始めたものをやりたかった。

かっこいい…
俺は一人の女として実花を尊敬し心では憧れの存在だったのだろう。

人一倍優しく自分を持っていた。
そんな実花に言い返せるやつもなく、実花は常にみんなの先頭にいた。

俺はいつもそんな実花の背中を見ていたのだろう。