私は美人ではない。まぁ、過大評価かもしれないが、中の中。
体重だって、標準的なので、スタイルだってそんなに悪くない。性格だって大丈夫だと思う。それに私は好きな相手に尽くす方だ。
自分では、選ばれなかった理由が解らない。だからもう自分に自信がなくなっていた。
不安という薄皮に包まれて過ごしていた。
そんなある日、帰宅のために着替えようと会社の更衣室に入った。私のロッカーの上の電灯が切れていた。私のロッカーのある場所だけが薄暗かった。とても切なくなった。私の未来は、周りと違いこんな風に暗いのかなって。
切ない気持ちのまま歩いていると、可愛らしい雑貨屋を見つけた。お店に入ると、ぬいぐるみのコーナーがあった。私は独りの寂しさから犬を飼いたかった。でもアパートに住んでるし、昼間はお留守番させることになるし、友人から犬を飼ったら、一生独身になってしまうと言われていたので、今まで躊躇していた。でも犬のぬいぐるみなら少し寂しさが紛れるだろうと考え、ぬいぐるみコーナーに近づいた。
子供のときもぬいぐるみは好きだった。よく、一目惚れした可愛らしい子を買ってもらっていた。
しかし、私の目が向いたものは、他のぬいぐるみに埋もれて、鼻先しか見えないぬいぐるみだった。なんだか今の自分に似ているように思い、私はその子を引っ張り出して、買った。
アパートに帰り、その子をよく見てみると、目が埋もれて潰されていたせいか垂れて三角の形になっていた。なかなか可愛いと思う。そして昔飼っていた犬にどことなく似ていた。
私は懐かしくなり、その犬が好きだったスズカステラを、昔みたいに頭を撫でながら、与えるまねをしてみた。
ガブ!
突然、ぬいぐるみに指を噛まれた。
えぇー!ぬいぐるみに噛まれた!!
いや待て。確かテレビで逆立ちするぬいぐるみとか売っていたよ。
今の子供には、リアリティや斬新な動きをしないと受けないのだろう。
「もっとちょうだい!」
話しだした!
いや、喋るぬいぐるみもあったなぁ。
「はらへった。」
ほう、今のぬいぐるみは電池が消耗すると自分で申告する機能もあるのか。
「単3電池?単4電池?何本かな?」
「そんなの食えるか!電池は食べ物じやないぞ。」
ぬいぐるみにどやされた。