月夜の物語



開け放された窓。

射し込む、蒼い月の明かり。



「…っ、誰!?」



部屋の真ん中に、1人の女性が座っていた。

色白で小顔。はっきりした目元に、真っ赤な小さい口。傷みを知らずに伸びた黒髪。

ぼう、と白く蒼く暗く、彼女の姿が浮かび上がる部屋。

壁中に月と海と波の絵が描いてある部屋。



彼女は弾かれるように新のほうを向くと、性急に頬を拭った。



「…す、すみません、苦しそうな声が、したもので…」

「出ていってください!早く!」

「はい、あのっ、失礼しましたっ…」



彼女の怒鳴り声に、新はふすまを閉めた。

そして、その場から一目散に立ち去った。