月夜の物語



予想通りだった。だけど大きな衝撃を受けたまま、新は黙り込んでしまった。


やっぱり姫だった。とてつもない美人だった。だけど独りで泣いていた。

どうして?どうしてだ、?



さまざまな思いが頭の中で交錯したのだ。



「姫様は、どうして泣いておられたのですか…?」

「………」



やっと開いた口で投げかけた質問に、姫は答えなかった。



「何が苦しいのですか?何か悲しいことがあるのですか?」

「………」

「私が、貴女様の助けに…「その必要はない!」



新の言葉は、姫の冷たい言葉で遮られる。



「どんなに願おうが、私は自分の意志ではこの城から出られないのだ。父の定めた人間以外の人間に姿を見せることも、もう一生ない。私のことは、忘れなさい」

「そんな…っ」

「…私は何も辛くなどない。悲しくなどない。これが、私の人生なのですから」



姫の声からは、哀愁と諦めが感じられた。