チュッ…と静かな部屋に響くリップ音を立てて放れた唇。 「逃げないの?」 「逃がしてくれるの?」 「いや。逃がさない」 「じゃあ…好きにしていいよ」 どうして、自分の口からこんな言葉が出てきたのか分からない。 そもそも浩ちゃんの部屋にノコノコ付いてきたのも変だ。 もしかしたら、彰くんから裏切られたショックでおかしくなったのかもしれない。 もうどうにでもなれって思ってるあたしがいるから。 「あんな奴…忘れさせてやろうか?」 そう耳元で囁く浩ちゃんに「うん」と頷いていた。