ニシヤンは大きな図体と赤ら顔が特徴的で、大酒飲みであった。
その気さくな人柄は皆からの人望も厚く、リーダー的な存在でもあった。

しかし、誰も確信に触れた事はないが、ニシヤンの右手は手首から先が切断されてしまっていた。

「おはようニシヤン。今日は何時もより荷物が多かったから、時間を喰ってしまったよ」

「そうかい、それは良いことだ。少しでも稼がなくちゃな。俺はちょっくら、向かいに水汲みに行ってくるよ」

 そう言うと、ニシヤンは左手にペットボトルを携えて十二支社通りの方へと、丘を下って行った。