「いやー。いつ見ても麗しいね!美谷さんと沢渓くん!」
二人が教室に帰った(追い返した)あと、隣の席の有沢ちゃんが話しかけてきた。
「あぁまぁね。麗しすぎて私まで目立つよ。
私は静かに薄暗くてひんやりした場所で鬱に過ごしたいのに…」
「薄暗くてひんやり…まさかの霊安室!?」
「杉谷ウルサイ」
前の席の杉谷(男)が話に入ってきた。
「つかさー、何で一緒?何で仲良し?」
「あたしも聞きたい!何で?」
「杉谷も有沢ちゃんも何でそんなに興味津々?
何てことはないただの幼なじみだよ」
そう。ただの幼なじみなのだが。
「それにしちゃーすげぇべったりじゃね?」
「うんうん!最初は美谷さんと沢渓くんって、付き合ってるのかと思ったけど」
「あ、俺も思った!けどさー、ベクトルちがくね?って。
沢渓も美谷さんも、すげぇ夜にべったりだよな」
杉谷も有沢ちゃんも、うんうんと頷く。
…何を納得しとるんすか二人とも。
「べったりっつってもねぇ?
まーさーかー恋愛には発展しませんよ、そりゃ。
私なんぞこんな見た目だしー?
見た目通りに暗い性格だし(笑)
それに天音みたいな子が居て、私を選ぶ人間なんていないっつの(笑)」
「「(意外にモテるのに勿体ない…)」」
別に好きな人とかいないけどさー。
居たとしたら、私、彼氏なんぞ出来ないのでは無いだろうか。
だってほら、海翔と天音がいつも居るわけだしね。
「私、彼氏できるんだろうか…」
遠い目をしている私の横で。
「どう思う?杉谷」
「いやー…沢渓がもし、夜に彼氏が出来たら、こっそりボコりそうだよな。
きっと、全力で阻止すんだろーなー…」
「あたしも思う。つーか、夜って老若男女に好かれるからね。
作ろうと思えば作れるよね。
噂では沢渓くんの次にイケメンな崎元くんも夜のこと好きっぽいし」
こんな会話がなされていたことは、意識の外だった。

