しばらくして着いた場所は、雑居ビルの一室だった。
テレビで見る様な、いかにも「事務所」といった場所。
そこに居たのは、恐らくリーダー格であろう男だった。
目が冷たい。
同じヤクザでも、勇人や竜さんにはまだ温かみがあった。
「へぇ~。こいつが婚約者か」
まじまじと私を見つめるリーダー格の男は、不気味なくらいに冷たい表情だ。
だから、婚約者じゃないんだってば!!
口を塞がれたまま、それでも抵抗していると、別の男が笑いながら言った。
「女一人が抵抗したって無駄だぜ。勇人の子供を妊娠されると、後々面倒なんだよな」
これが、ヤクザの世界なの?
それとも、たまたま陥っただけ?
「何か言いたそうだな。口だけ利けるようにしてやるよ」
そう言って、リーダー格の男は、私の口からハンカチを外した。

