「母さん…」 部屋のドア越しに呼ぶと、母さんは開けてくれた。 ここは、親父と母さんの部屋だ。 久しぶりだな。 この部屋に来るのは。 子供の頃は、毎日過ごしていたのに、いつの間にか一番寄り付きたくない場所に変わっていた。 「勇人。どうしたの?怖い顔して」 いつもと変わらない、優しい笑顔の母さんが立っていた。