「旦那なら、慌てて出かけましたよ」


晴彦は、いたって冷静に、オレを見ながらそう言った。


やっぱりな…。


美優に嫌がらせをしたのは、間違いなく親父だ。


「母さんは?」


「姐さんはいますが…」

「じゃあ、母さんに言ってくる」


すれ違い様に、軽く晴彦を突き飛ばした時、呼び止められた。


「若旦那。姐さんに何するんですか?」


この家で、オレに意見するのは、親と晴彦だけだ。


お前は親父かよ。


親父なら言いそうなセリフだ。


「何も。ただ、言いたい事を言うだけだ」