「キカイ」の子

「それじゃあ…夏美。勉強が出来て運動も出来れば、その人は幸せじゃないの?その逆で、すべてが駄目な人は不幸なんじゃないの?」






「どうして?」





夏美はガラス玉のように輝く瞳を冬彦に向けて尋ねた。





「だって、沢山の能力を持っている人は、いろんな場所から必要とされるから…幸せでしょ?」








「そうとも限らないよ、冬彦。」





夏美は冬彦を慈しむような、優しい目で見て、諭すように話した。



「…え?」






「人はね、それ自体が社会とかの『歯車』なんだけど…人の中…つまり、『歯車』の中に、もう一つ…『歯車』があるの。」









「もう一つの…『歯車』?」







冬彦は、また、夏美の言っていることを理解できなくなり、繰り返すしか出来なくなった。









「それはね…心っていう…『歯車』だよ。」








夏美はそっと、自分の手を胸に当てた。