「キカイ」の子

「失礼します…」




冬彦が控えめな声でそう言いながら部屋に入ると、健一は笑顔で迎えた。






「やぁ、高椿君。透から話は聞いているよ。しかし、何故僕の所に…？」







「いえ…夏美に会いに行って良いのかどうか気になって…」







「……僕は別に構わないよ。第一…それを決めるのは夏美ちゃんじゃないかな？」






健一が笑顔でそう言うと、冬彦は少しの間考え、


「……はい。そうですね。」


と、健一を真っ直ぐに見て言った。






健一は冬彦の目を見ると、嬉しそうに微笑んだ。







「それじゃ…」







冬彦が会釈をしながら部屋を出て行こうとすると、健一が彼の背中に向けて話し掛けた。








「…夏美ちゃんは、君をずっと待ってたよ。」








冬彦はその声を胸に刻みながら、一歩踏み出し、部屋を出た。








冬彦が消え、ドアが閉まっても、健一は、しばらくの間、彼のいた場所を見ていた。