「キカイ」の子

「でもね…前よりは落ち着いて…向き合えるようになったんだ。冬彦のおかげかな?」





夏美はそう言って、初めて冬彦と目をあわせた。





「え…?」




…僕のおかげ?




冬彦はその意味を理解できなかった。





「冬彦が側にいてくれた…それだけで、あたしは少しの間…自分の死と距離を置けたの。」





夏美はそう言うと、顔を元に戻して、海の方を見つめたまま、話を続けた。






「それまでは、何であたしは、こんな病気なんだろう…何で死ななきゃいけないんだろう…って、ずっと考え込んでた。

でも…冬彦と付き合い出して、冬彦と会って、一緒に話してると…言葉は悪いかもしれないけど、気が紛れたの。」






冬彦は、しばらく夏美の横顔を見ていたが、彼女と同じように海を見た。







太陽は海に沈みかけており、辺りを闇が包み始めていた。