弓に弦を張り、素引きをして頭の中でイメージする…。


「…次!月城、入れ!」


部長の3年生、北条隆也(ホウジョウ タカヤ)先輩が厳しい声で俺の名を呼んだ。


「……はい!」


俺は弓と矢を持ち、射場へと入る。


背筋をピンと伸ばし、弓を構え…的を見つめた。


―――バシュ……ッ!


矢は的の中心から少し離れて突き刺さる。


ほんの少しの集中力の乱れだ……。


心の中でチッと舌打ちした気分だった。


「……射の動作は申し分ないな。だが、ほんの少し集中力が乱れてるぞ」


「………はい」


さすがよく見てるな…と思わずバツの悪い気分だった。


うちの弓道部はなかなかの実力者揃いで…


部長をはじめとした面々が数々の大会で団体に個人と賞を総なめにしている。


「おまえには期待してるんだからな。頼むぞ」


肩を叩かれ、ありがとうございますと礼をした。


気合い、入れねぇと。


それでも、心の奥底から…君に逢いたいと、声がした。