―キーンコーン…

学校の時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。

長い先生の話が終わり、挨拶をする。


「あ…。」


外を見ると海がくたびれるような顔をしていた。


「行かなきゃな…」


重い腰で立ち上がる。

波流とすれちがった。


「あ…波流っ…」


「ん?どしたの?」


「…いや…。じゃあな」


「うん?バイバイッ!」


笑って手を振ってくれた。

海の姿を確認し、
近づく。


「長いだろっ?
俺の担任の話。」


「長い…長すぎる…
あのまま話し続けてたら朝になるんじゃねぇの?」


歩きながら、ハァとため息をつく。


「ほら!
走るぞ!お前の家まで競争だ!
今度こそ俺が早いんだからなッ!?」


「…フフッ分かったよ。
俺コンビニの方から行くからお前は駅の方から行けよ?」


「フフ…そんなに差があって大丈夫か?」


「お前こそ。
近いんだから先ついとけよ?」


「わ―ったよ!
じゃあ…」


「「スタート。」」


バッとそれぞれの方向に走り出す。


この勝負は…
海が…配慮してくれたんだろう。


それなら尚更…


「負けらんねぇ…なッ」


グンッと一気に走る足に力を入れる。


この…

何も考えずに走る時間が好きだ。


何も頭に入らなくて。

アイツは今どこ走ってるんだろう?

とか、

まさかもうついたとか言わねぇよな?


とか…

“走る”ことだけを考えられる…。


もちろん、しんどいし回復するには少し時間がかかるけど。

走った後の汗は、暑い時に流す汗よりも、

透明で、
純粋なんだ。


この時間が大切で。


大好きなんだ。