「そっかぁ……」


海は目の前にあったお茶を一飲みした。


ゴクッという音が妙に俺の心に響く。


「それってさぁ…」


見なきゃいけなくて。

見たくなくて。


目を背けていた現実。


「“嫉妬”なんじゃねぇの?」


「……。」


“嫉妬”
小さい頃からしてはいけないと言われたもの。
母さんに、嫉妬で人を憎んではいけない。
と教わったのに。


波流の横で、


本当に楽しそうに、


嬉しそうに笑う、


雅が…憎かった。


「やっぱ…嫉妬してんのかな…?俺」


「おう。
でもさ、俺はお前がこの恋を望むなら応援するぜ?
だけどさ……」


「重ねるのだけはしちゃだめだぜ?」


これが…

この気持ちが恋だというのなら。


俺は、


“亜弓”に重ねて。じゃなく、


“波流”を愛したい。


「分かってるよ。」


「そっか…」


そう言って海は安堵の表情を浮かべた。


「俺、食堂行くけど啓も行くだろ?」


海は立ち上がって欠伸をした。


「もちろん。」


そう言って立ち上がった俺に海は耳打ちした。


「波流ちゃんの横。
キープしてやるよ?」


そう言ってピースをして先に部屋を出て行った。


「………」


海は本当に俺にとって、


大切で一番心を許せる友達だった。