「じゃぁオレ、先にあがります」


四月中旬のある日、結平は珍しく早く帰った。

いつもは遅くまでバイトをしているけど、今日は用事があるらしい。


「お疲れ様でした」


結平より一時間遅くバイトを終える。

薄暗い中、一人で家に向かった。


ガチャ…


いつものようにドアを開けると、玄関に見覚えのない靴が一足置いてあった。

男の靴…

最近見なくなった男の靴を見て、幼いあの日を思い出す。


「……」


あたしは綺麗に並べられたその靴を通り過ぎ、何も言わず家に入った。