「聖治…?」 何も言わない聖治がちょっと怖くてそっと名前を呼んでみる。 すると、聖治がいきなりあたしの手を放して、 「ごめん」 短く謝った。 「弥生……」 「え?」 「…なんでもない」 いつもだったらもー、何ー?と聞き返すけれど、 そんな雰囲気ではなかった。 あたしも黙り込んだ聖治に合わせるように黙り込む。 「手、痛くなかった?」 「大丈夫…だよ?」 「もう無理やりしないから…。本当にごめん」 「いいよ、謝らないで?」 まだ少しだけ温かいあたしの右手。 「…やっぱり」