「2月生まれか。確かにレイには冬が似合うな」
背を向けたままのあたしの行動を、どう受け取ったのかは分からない。
だけど、あなたの優しさは、とても自然に、あたしの心をやんわりと侵食していった。
「俺は……。俺は、今日のこと、体だけの関係だとは思いたくないんだけど」
その言葉に、思わず、振り返ると、少し悩むような、とても色っぽい、そんな笑顔のあなたが居た。
あたしの期待していた言葉。
だけど、それは同時に、結果的に、あなたを傷付けてしまうことがわかっている言葉。
抑えきれないどうしようもない嬉しさと、目の前にいる、優しい人を不幸にしてしまうという恐怖。
あたしの心の中は、ごちゃ混ぜになった。
「お兄さん、物好きだね。こんな、どこの誰かもわからない女にそんなこと言うなんて」
「お兄さんじゃない、カイだ。カイって呼んでよ」
「…カイ……カイ……」
抱きしめられた腕の中で、あたしは確かに、幸せを感じた。
このまま、あなたの腕の中で死んでしまえたら、とさえ思った。