残された人生が、短いということを聞いたあの日のことを思い出した。 長く、知り合いでいるだけに、表情を見れば伺える。 きっと今、目の前に座る巧も同じことを思い出しているのだろう。 「あの日からね、時々感じるの」 あの日、が指す日をもちろん巧は理解っているようで、あたしの目を見て、ゆっくりと頷いた。 「あぁ、あたし、幸せなんだ、って」 その瞬間、巧がにっこりと微笑んだのを見て、あたしは妙に安心した。