春の陽気はポカポカと気持ちよいものの、風で砂ぼこりが舞うし、なにより花粉がひどい



透は花粉症だった



だから2人は使われていない教室で昼ご飯を食べることにした



「新しいクラスどんな感じ?」


透が鼻水をティッシュでかむついでに、奏多に聞く


「ん〜、別に」



「幸多はあの爽やかな笑顔で楽しいって言ってたぜ」


「だからなんだよ」




奏多は、透や幸多のように本当の自分を知っている者にしか見せない不機嫌な顔をした



「いや」



「あ、透、お前さ去年幸多と同じクラスだっただろ?眼鏡の真面目そうな女子いなかった?」



透は眉をひそめた


「相原さんのこと?」



「ああ、多分それ」



透は奏多を見て少し驚いていた


奏多が学校のよく知りもしない他人について聞いてくるのは初めてだったし、奏多は自分にとって重要な人物以外の名前や顔を覚えるのを苦手としていた



苦手というより、覚える気がないように透には見えていた



だから突然、あの目立ちもしないおとなしい女子の話が出たものだから透は不思議に思った