「奏多、これからどうすんの?相原さんは、放置?」
「んー、今のところ。害がないようなら。気分によっては釘刺すかも」
無表情のまま淡々と話す奏多に、透は苦笑いした
「気分…ね。あんまやりすぎんなよ」
「うん」
奏多は透の忠告をわかったのかわかってないのか、明後日の方向に目を向けて返事をした
「幸多がこの話聞いたらどう思うかな」
「少なからず驚きはするだろ」
「だな。相原さんは今までの人たちとちょっと違うかもな。偶然だとしても」
そう言われて奏多は黙った
偶然で自分たちを見分けられたなら、奏多は彼女を他の奴らと違うなんて認めたくなかった
偶然じゃなかったとしても、認めたくなかった
だって初めてだったから
ほくろがなかったら透や親に見分けられるのだって危ういのに、知り合って数ヶ月のよく知りもしないクラスメイトの女子に突然見透かされたなんて認めたくなかった
奏多は空を見上げた
さっきよりどんよりとグレーの雲が重そうに浮かんでる
重そうなくせに流れの早い雲の動きが、奏多には目障りだった

