相原真琴は呼ばれてようやく顔をあげた



奏多はにっこり作り笑顔で相原と目を合わせた



相原は目をまんまるくして、驚いているようだった


黒目がぐらぐらと泳いでいた


なにも言わずに驚いている相原真琴を見て、奏多は作り笑顔を続ける



なんで幸多くんがここにいるの?

そう思っているんだろうと奏多は自然に推測できた



幸多は今ごろ部活で体育館にいるはずだから



相原はようやく口を開けて、小さく呟くように言った


「芦名くん…?」



奏多は小さく笑って、しゃがんだ




そうして相原真琴と視線を合わせた



相原真琴は動揺したのかぱっと視線を反らす



「ど、どうしたの?」



斜め下を見て相原真琴は聞こえるか聞こえないかわからないくらいの小さな声を出した



「相原と話したくて」



奏多が飄々というと、相原真琴の頬が途端に赤く染まった



「え…」



「何読んでんの?」


「ただの、小説っ」



「相変わらず本好きなんだな、相原って」



「うん、なんで知ってるの?」


「わかるよ、それにしても久しぶりだな」




奏多は幸多を思い浮かべていた


幸多ならこう言うとかそんなことを考えて



別に不自然なことを言ったわけでもないのに、相原真琴は今度は奏多と目を合わせて怪訝な顔をした