奏多はまるで幸多だった


コンシーラーで目元の黒子はなくなった



奏多の気持ちは久しぶりに高揚していた



相原真琴は木曜日の放課後は図書館にいることを奏多は知っていたから、この時を利用することにした




奏多の暇潰しとは幸多に成りすまして、幸多に好意を寄せる女子に近づくことだった


詳しくいえば、思わせ振りをして期待を持たせることだった



相手の女子とは関わりたくはないし興味もないけど、目元の黒子のない奏多を幸多だと信じきってうぬぼれる女子の顔は最高に笑えた


そのあとすぐにその女子が幸多に告白した噂なんか聞けば、奏多は腹を抱えて笑えるほどだった


当たり前のように奏多が奏多だとバレたらことなんて一度もなかった












図書館はけして広くはないから、相原真琴を見つけるのは容易にできた


相原は窓際の1人席で机の上にいくつかの本を重ねて、そのなかの一冊を広げて読んでいた



相原真琴は本に集中していて、奏多がすぐ傍に近づいても気づかない様子だった


「相原」