そういやあいつはここに来たことあるのかな?
「なぁ叔父貴」
あたしは前を歩く叔父貴に話しかけた。
「あいつ…メガネってここに来ることあるの?」
「メガネ?」
叔父貴は目を細めてちょっと考えるように小首を傾げた。
「あーっと、あいつだよ。ホタテだか、アサリだとか言う名前の」
「―――ぁあ、戒のことか?」
頭の中で神経回路が繋がったという感じで叔父貴は手を打った。そして口の中で「ホタテって」と言い小さく笑った。
「そう!あの貝がら野郎!あいつ…叔父貴に何かしてねぇか!?」
昨夜の会話を思い出す。
「僕が興味あるのは琢磨さんだけだよ」
恥じることなくあいつはしれっと言いやがった。
「何かって……?」
叔父貴が怪訝そうに眉間に皺を寄せる。
そ!そんなことあたしの口から言えるかぁ!!
すると叔父貴は眉間の皺を取り去り、ふっと笑った。
「戒がお前に何か言ったか?だったら気にするな。お前をからかって遊んでるだけだ」
からかって……?
そんな風には見えなかったけど。
あいつ、叔父貴には何も伝えてないんだな。
叔父貴もメガネの気持ちに気づいていないようだ。
そのことにちょっとほっと安堵する。



