挨拶もそこそこに蛇田と別れると、あたしは急いで叔父貴の待つ最上階へと足を運んだ。
早く会いたいからってもちろんそれもあるけど、
それ以外の何かから逃げるように
「大丈夫、俺がいる」
そう言ってもらって安心できるように、あたしはひたすら走った。
インターホンを押すと、すぐに叔父貴が扉を開けてくれた。
「朔羅。早かったな」
顔を出した叔父貴は
風呂あがりなのか、しっとりと髪が濡れていて裸の上半身に首にタオルがかかっていた。
ブ―――!!!
またもゃ鼻血を出すところだった。
「ふ、風呂あがり??」
鼻を押さえて、玄関ホールに足を踏み入れる。
「ああ。昨日会社に泊まりこみで、さっき帰ってきたばかりなんだ」
叔父貴はあたしにくるりと背を向けて、歩き出した。
叔父貴の広い背中には一匹の龍が鮮やかに描かれてる。
和彫りの刺青で、雄雄しく口を開いた龍のアップがあり、その下に長々と続く胴体がくねくねと美しいカーブを描いていた。
その所々に淡いピンク色をした桜の花が散っている。
美しい青龍の紋―――
叔父貴だけが背負える唯一無二の彫り物だ。



