布団に顔を埋めながら、枕を抱えて朔羅が眠っていた。


そのあまりにも無防備な寝顔に、思わずあっけにとられた。


おいおい、いいのかよ。


仮にも龍崎組のお嬢だぜ?


と思いながらも、俺はベッドの端に腰掛けた。



開け放ったままの窓からどこからか桜の花びらが舞いこんできて、ベッドや掛け布団、朔羅の白い肌や柔らかそうな髪にところどころ散っている。



きれいだった。



まるで作り物のように。完成されたそれは、美しかった。








栗色の長いふわふわした髪。


雪みたいに白い肌。


桜色をした唇。


「何か……旨そう…」


言葉通りに受け取るな。


旨そうって言うのは―――つまり……そういうことだ。



俺は彼女の頬をそっと指でなぞった。


「……ん…」


僅かに身じろぎしたけど、起きだして来る気配はない。


長い睫がわずかに震えて、頬に影を落とした。