鴇田は古くから青龍の補佐役として、重役を担っている。


組織のナンバー2の威厳は伊達じゃなく、その証拠に夕飯の支度をしていただろうマサがエプロン姿で慌てて飛び出てきた。そのあとにぞろぞろと組員が続いている。


「「「旦那!ご苦労さまでやす!」」」


野太い声が響いて、マサが恭しく頭を下げた。


「鴇田の旦那、お疲れ様です!!こんなところではなんですからどうぞ中へ」


いつになく緊張した面持ちで、マサが家の中に促す。


「いや、今日はちょっとキョウスケに会いに来ただけだ。用が済んだらすぐ帰るんでね」


「キョウスケ?」


「ああ。お嬢がどうしても会いたいとおっしゃるのでね」


「そうですかい。でも、せっかくわざわざお越しいただいたってのに、茶の一杯でも出さねぇでお帰しするわけには…」


「マサもああ言ってるんだ。少しあがって行こうぜ」


あたしは無理やり鴇田に笑いかけた。


鴇田が来てるってのに、組のもんが玄関前で帰すとは思えなかった。


組の連中が鴇田を労ってる間に、キョウスケと少し話ができるかも。


あたしはそんな風に企んでいた。


「お嬢がそう言うのなら…」


鴇田もさすがにここで無理は言えないようだ。組のもんに怪しまれでもしたら大変だからな。


そう言うわけであたしは家に入ることに成功した。


鴇田を客間に連れて行き、


「んじゃ、あたしはキョウスケと会ってくるから。お前はここで茶でも呼ばれてろ♪」


そういい置いて、あたしはそそくさとキョウスケの部屋へと向かった。