「その話は本当かよ」


あたしはわざと挑発的に鴇田を睨んだ。


鴇田は心外だと言わんばかりに眉間に皺を寄せ、あたしを睨み返してくる。


「嘘は言っていませんよ。姐さんに確認しましたからね」


「どうだか。お前昨日盛大に姐さんと言い合いしてただろ?昨日の今日でそんな早く状況を教え合う程の仲に戻ったってのが怪しいぜ。


それともあの喧嘩自体がお前らの打った小芝居だったのか?」


あたしの問いに鴇田の眉がまたもぴくりと釣りあがった。


今度は眉間に寄せられた皺が一層深く刻まれ、切れ長を陰険に細めている。


「曲りなりにも虎間は盃を交わす大切な取引相手ですからね、向こうだって必死だ。お互いつまらない意地を張ってる場合じゃないってことですよ」


「ふぅん。それが大人のやり方ってやつか。でもあたしは子供だからこの目で確認しないと、信じられないんだよ」


あたしは身を乗り出すと、横から鴇田のハンドルを軽く握った。







「龍崎組につけな。キョウスケの無事を確認する」






声を低めて、鴇田を睨むと、こいつはちょっと逡巡するように視線を上下させ、「やれやれ、疑い深いお嬢さんだ」とため息をつき、やがてハンドルを切った。