あたしの言葉に鴇田の細い眉がぴくりと釣りあがった。ほんの一瞬。


「な、なんだよ…」


「いえ。あのガキと付き合ってるんですか?初耳ですね」


「いちいちお前なんかに言うかよ。第一あたしが誰と付き合おうと勝手だろ?」


「それもそうですね」


と鴇田は納得顔。いやにあっさり引き下がるところが不気味だ。


まぁでもこいつは叔父貴の右腕だとは言え、あたしのことにはほとんど無関心だからな。納得っちゃぁ納得だけど…


「あのガキは治り次第こっちに戻ってきますよ。曲がりなりにも会長の息子だ。いつまでも向こうにいるわけには行かない」


その言葉を聞いて、ほっと安堵した。



色々不安があったけど、ちゃんとした病院に居るんなら良かった。


しかももう帰ってこないってわけじゃないことに、安心した。





「よっぽどあのガキが好きなんですね。お嬢は」





鴇田が無表情に口を開く。


ホントに……こいつぁ何考えてるか全く読めねぇ。


どう答えるのが一番良いのか分からない。って言ってもあれこれ考えて物を言うのは性に合わないけど。


「戒のことは分かった。キョウスケは?あいつも大阪に連れてかれたの??」


あたしの質問に鴇田はちょっと考えるように首を捻り、


「キョウスケ…?ああ、鷹雄の……」と納得が言ったように、頷いた。



「あいつはこっちに残りましたよ。姐さんはあいつも一緒に大阪に連れ帰りたかったみたいですけどね。なんせ大学がこっちだし、それに二人も長期不在だとさすがに組のもんも怪しみますからね」



キョウスケ……


大学―――そう言えば注射器はまだキョウスケが持ってる筈。