TRRR…


機械的な呼び出し音が6回程鳴っている。もう一回鳴るまで待って、それでも出ないようであれば、切ろう。


そう決めてた矢先だった。




TR…『もしもし。朔羅?』




独特の深みのある低い声。くすぐられるような甘くて…あたしを呼ぶ声はちょっと切なげに揺れていた。


たった数時間聞いてなかっただけなのに、ひどく懐かしく感じて、でも……


すごく安心する―――





「―――戒」



『どうした?もしかして、何かあったか!?』


電話の向こうで戒が勢い込んだ。


「…な、何もないよ。……ごめん、声が聞きたくて……」


電話の向こうで戒がちょっと笑った。


呆れられたかな…そんな風に不安に思ってると、


『…何かあったと思った。でも無事で良かった。あ、今おかんが風呂に入ってるところなんだ。ちょっとなら話せるぜ?』


と安堵した声が聞こえて、あたしもほっとした。


「こっちも叔父貴は風呂に入ってる。だけどリビングに鴇田が居るんだ。あたしを見張ってる」


『………鴇田?』


戒の声が一段と低くなり、険悪な色を帯びた。


「それより戒、お腹は?大丈夫なのか??」


『ああ、あの変人医者が用意してくれた点滴が効いてる。今は結構楽』


それを聞いて、あたしは肺にたまった息をながながと吐き出した。