『朔羅!?朔羅だよね…??』


あたしが返事をしないもんだから、リコが心配してる。


あたしは溢れ出そうになる涙を引っ込めながら、無理やり笑顔を作った。


「……うん。朔羅だよ。ごめんね」


『良かった~!無事なんだねっ!!今日は龍崎くんもお休みだったし、二人には連絡取れないしで、また何かに巻き込まれたのかと思ってたよ~』


リコ…心配してくれてたんだ。ごめんね……


「ごめん、連絡入れずに。でもあたしは大丈夫だよ!それがねぇ…」


あたしはかくかくしかじか戒が急性胃炎になって、急遽入院することになったことを伝えた。


『えぇ!?大丈夫?』


「あ~、まぁ二、三日の入院で良くなるって」


『そうだったんだぁ。千里もね、やっぱりすごく心配してて朔羅に何度も連絡してたんだよ。後で連絡してあげてね』


「うん。ごめん、心配かけて。千里にも謝っておくよ」


少しの沈黙があって、リコが電話の向こうで息を吸う音が聞こえた。





『―――朔羅、何かあった?』




「………え?」


『…いつもより…元気ない……何かあったんなら、何でも言ってよ。そりゃ解決できないかもしれないけど、話すだけでも楽になるよ、きっと…』


リコ……あたしの親友―――


何でも打ち明けるって誓った……


「じ、実は……」


と言いかけたところで、


寝室の扉がぎっと鈍い音をたてて、ゆっくりと内側に開いた。


ドキリ…


いつの間にか入り口で鴇田が腕を組んで、もたれかかっている。


切れ長の目を細めて、口元に薄く笑みを浮かべていた。