「……どーもしねぇよ…」無愛想にそう答える戒。


「どーもしねぇわけないじゃん…」


明らかに余裕のない態度。眉間に皺を寄せているのは、機嫌が悪いとかの類いではなく、苦しそうだ。額には脂汗が浮いている。


琥珀色の瞳の奥は、くすんで見えた。


「か、風邪でも引いた?」


あたしは戒の額にぴたりと手を当てたが、熱があるわけではなさそうだった。


「違うって!」戒は無理やり笑顔を作って、あたしに笑いかけたけど、ふいに


「…って!!」と小さく叫び声を上げて、ぎゅっと目を閉じた。


お腹の辺りを両腕でぎゅっと抱いて、背を丸めている。


「は、腹が痛いのか!?ど、どーしよ……」


どうすればいいのか分からず、それでも誰かを呼ばなければいけないことは分かりきっていたので、あたしは迷わずキョウスケを呼んだ。


キョウスケなら戒の正体を知っているし、昔からの付き合いだからもし持病があった場合どう対処すべきか知ってると思ったから。


「戒さんは俺が言うのもなんですけど、我慢強い人なんです。滅多なことで痛いとか苦しいとか言わないんで、心配ですね」


とキョウスケも顔色を変えて、戒の部屋に走った。


「戒さん、大丈夫ですか?」


心配そうに戒を覗き込み、キョウスケは戒の腹に乗せた腕をやんわりと退けた。


そして戒の腹に手を当てると、掌で少し押したりして感触を確かめる。


キョウスケの掌が戒の腹を押すたびに、戒が小さく呻く。


なんか…お医者さんみたいだ……


そんなことを思っていると、出し抜けにキョウスケが振り返った。


表情は真剣そのものだ。





「恐らく急性胃炎でしょう。早急に医者に診せた方がいいです」