「ほんとかぁ?琴をダシにお嬢に近づこうって魂胆じゃないのか?」


とまだまだ疑り深いマサは、ずいと戒に顔を寄せるとガンたれた。


あたしはマサを引き剥がすと、


「大丈夫だよ。こいつぁ女に興味がないんだ」


あたしの発言にマサはびっくりしたように後ずさった。


「ほ、ホントに…」


「ホント~に♪」


戒がにっこり笑う。


「ついでに教えてやるよ。こいつの“彼氏”はキョウスケだ。だから納得しただろ?」


あたしの言葉にマサは顔を青くして、あたしの影に身を隠した。


ちらりと戒を見ると、こいつは


「てめぇ!」と言いたげに眉を吊り上げていた。


「生きていない」発言のお返しだ、このやろう。


あたしは心の中でちょっと舌を出すと、ほくそ笑んだ。


でも、ま。この発言はあたしと戒が付き合ってるっていう事実のカムフラージュにもなるし、丁度良かったのかもしれない。


今はまだ組のもんにこいつが虎間であることを知られちゃならねぇからな。





盃を交わすまでは―――





あたしはマサを引きずるように引っ張っていくと、


「邪魔したな」と戒に一言言って部屋をあとにした。




結局―――


マサの登場のせいでキャンサーセンターのこと聞きそびれちまったけど…



ま、いいか。