電車に揺られること15分。


叔父貴には今日、行くことを伝えていない。


もしかして会社に居ないかもしれない。


それならそれでいい。


むしろ居ない方がいい―――?


そんな考えがふと過ぎってあたしは頭を振った。


今更


今更何ビビッてんだよ。


叔父貴の口から何聞こうと、今更驚かない。


…………たぶん。


オフィス街…とは言え、龍崎グループのビルは立ち並ぶビルの中でも頭一つ分飛びぬけている。


そのノッポの建物が近づくにつれ、あたしの心臓がぎゅっと音を立てて縮こまる。


ドキドキする心臓を宥めるように、あたしが胸の辺りを押さえると、反対の手に戒の手がそっと重なった。


「おめぇが何を聞きたいのか、大体の察しはつくけどよ。何聞いても俺のお前に対する気持ちだけは変わらないから」


琥珀色の瞳をちょっと緩ませて、戒が穏やかに笑った。


戒………


うん…そうだね。信じる。


あたしはその思いを込めて戒の手を握り返した。


そのときだった。


一台の黒いセルシオがあたしたちの横を音もなく、通り過ぎていく。


ナンバーがちらりと見えた。


叔父貴の車だった。