ドキンドキンと高鳴る心音を抑えようとして、あたしはさりげなく胸に手をやった。


癖なのだろうか。


何かあると心臓の辺りを押さえるのは……


それだけじゃねぇ気がするけど。




「メ、メガネ……?」


あたしは恐る恐る問いかけてみた。


「あ。ごめん。朔羅さんの分はちゃんとあるよ?」


にこっと、笑った顔はいつもの優しい笑顔で。


言葉も少なく前を向いたメガネ(初代)の背中は、やっぱりさっきと変わらない無防備な背中だった。




あの一瞬の殺気は何だったのだろう。




こいつ―――



何もんなんだ……?