俺の言葉で川上がちょっと目を広げて腕を解いた。


「……何で……」


ドンピシャリかよ……


正直半々だった。


男女の待つ恋愛感情とはまた違うだろうけど、川上の目は友情のそれとも違う気がしたから。



俺たちが付き合うことになった、っと朔羅が宣言したとき、こいつは一瞬哀しそうな目をした。


ほんの一瞬。朔羅は気づいていないだろうけど。


それでも俺にはその一瞬を捉えることが出来た。


俺は鼻もいいが、目もいいんだ。





ついでに言うと勘も。





川上は解いた腕をぶらりと垂らして、抑揚を欠いた目で俺を見上げてきた。


「……別に…朔羅を友達以上に見てるわけじゃないよ。ただ……」


川上は俯いて、言葉を濁した。



俺は黙って川上の話に耳を傾けることにした。





「ただ……大切なの」






大丈夫だよ、川上。



俺も朔羅は大切だ。



だからあいつが目を背けたくなるような汚い世界から、視界を覆ってやることができる。



見ないように。



触れないように。



現にCANCER CENTERの封筒はあいつから奪った。




だけど






目を覆っても、汚いものは確実に存在する。




視界を遮っても、現実は通り過ぎない。






CANCER CENTERの封筒が存在するように。





あいつが傷つく姿を見たくないのに




過酷な現実を止める事は、俺にはできない。




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