「……なんだよ?」
苦笑しながらネクタイを整える戒。
あたしは戒のネクタイの端を掴んで、ぐいっと引っ張った。
「何す…!!」
戒の抗議の声は、途中でかき消された。
あたしの強引な口付けによって―――
びっくりして固まったままの戒を開放すると、あたしは照れ隠しに軽く睨んだ。
「いつかのお返しだ。バーカ」
戒は最初びっくりして目を開いていたものの、すぐにふっと表情を緩め、
「まったく。お前はいっつも俺の心をかき乱す。普通の女に通じる戦法が全く通じないって思ったら、こっちが予想もしなかった方法で攻め込んできやがる」
と言ってちょっと笑った。
「じゃぁ、これもかわせるか?」
あたしは赤くなった顔を戒から背けることなく、まっすぐに見上げて口を開いた。
「あたしあんたのことまだ好きとか分かんないけど。
もっと知りたいって思う。
だから、とりあえず……
付き合わない―――?」



