『雪斗―――?どうしたの?寝ぼけた?部屋は違うよ』


目を擦りながら、あたしはちょっと笑った。


『寝ぼけてねぇよ。俺は正気だ』


『正気…あは!何言ってんの~』


呑気に笑ったけど、雪斗の表情は険しかった。


まるで獲物を捕らえようとする猛獣の目のように鋭い光を湛えていた。


『……雪斗?』


もう一度聞くと、雪斗は急にあたしの顎を乱暴に掴んで、強引に唇を重ねてきた。




初めての



キスだった。




ファーストキスは夜景の見える高台でしたいな。


なんて淡い希望を抱いていたあたしの夢は



あっけなく崩れ去った。





『―――っと!雪斗!』



唇が離れると、あたしは乱暴に雪斗を押しやった。


だけど雪斗はびくともしない。


『……な、何で……』


わけが分からない。


何でこんなことするの―――?







怖くて





怖くて、怖くて、怖くて






声も出せなかった。