戒と店の兄ちゃんが値段交渉している脇で、あたしは指輪のコーナーを見た。
手作りっぽいリングはどれも凝ったデザインで可愛い。
あ。これ可愛いかも…
あたしは透明のリングの中に、小さな桜の花が入ったリングを手に取った。
ちょっとはめてみたけど……
ダメダ。こんな女の子っぽいもんあたしには似合わん…
がくりと首をうな垂れる。
サイズぴったりなのになぁ。残念……
「まいどあり~」
という兄ちゃんの声がして、あたしは慌てて指輪を戻し戒を見た。
「買うの?」
「おぅ。デートの時つけてこいよ」
「デっ!デートぉ!!」
あたしは素っ頓狂な声を上げて目を開いた。
誰がお前なんかと!!
と言おうとした瞬間、戒が制服の尻ポケットから長財布を取り出した。
「わり。これ持ってて」と強引に鞄を押し付けられる。
な、なんてゴーイングマイウェイなお人なの??
あたしは押し付けられた鞄を胸に抱こうとしたけど、思った以上に重い鞄があたしの手の中からずり落ちた。
ファスナーが開いていた鞄から教科書やら文庫本やらが地面に落ちる。
あ~…やっちまったよ…
ってか鞄の蓋ぐらい閉めとけよ!
怒りながらあたしは本を拾い上げた。
明らかに教科書の類いでない、分厚い小説やら英字の本が何冊もある。
そういやこいつこう見えて読書好きだっけね。
次々と悪者をやっつけるぐらいバイオレンスな奴なのに、趣味は意外に文系でちょっとびっくりだ。



