。・*・。。*・Cherry Blossom・*・。。*・。


戒と店の兄ちゃんが値段交渉している脇で、あたしは指輪のコーナーを見た。


手作りっぽいリングはどれも凝ったデザインで可愛い。


あ。これ可愛いかも…


あたしは透明のリングの中に、小さな桜の花が入ったリングを手に取った。


ちょっとはめてみたけど……


ダメダ。こんな女の子っぽいもんあたしには似合わん…


がくりと首をうな垂れる。


サイズぴったりなのになぁ。残念……


「まいどあり~」


という兄ちゃんの声がして、あたしは慌てて指輪を戻し戒を見た。


「買うの?」


「おぅ。デートの時つけてこいよ」


「デっ!デートぉ!!」


あたしは素っ頓狂な声を上げて目を開いた。


誰がお前なんかと!!


と言おうとした瞬間、戒が制服の尻ポケットから長財布を取り出した。


「わり。これ持ってて」と強引に鞄を押し付けられる。


な、なんてゴーイングマイウェイなお人なの??


あたしは押し付けられた鞄を胸に抱こうとしたけど、思った以上に重い鞄があたしの手の中からずり落ちた。


ファスナーが開いていた鞄から教科書やら文庫本やらが地面に落ちる。


あ~…やっちまったよ…


ってか鞄の蓋ぐらい閉めとけよ!


怒りながらあたしは本を拾い上げた。


明らかに教科書の類いでない、分厚い小説やら英字の本が何冊もある。




そういやこいつこう見えて読書好きだっけね。




次々と悪者をやっつけるぐらいバイオレンスな奴なのに、趣味は意外に文系でちょっとびっくりだ。