か!可愛い!!
ってか公衆の面前でチューするな!
そう怒鳴りたくてあたしは口を開きかけたが、
「仲いいね~」とどこからともなく声が聞こえてきてあたしはキョロキョロと辺りを見渡した。
道の脇で露店を開いている若い兄ちゃんが「こっちこっち」と手を振っている。
黒い大きなケースにネックレスやブレスレットなどの類いを並べて、折りたたみ椅子に腰掛けていた。
「カップル?彼女にプレゼントしてあげなよ~。安くしとくから♪」
やたらときさくな兄ちゃんはにこにこ顔であたしたちを手招きした。
露店か……
こうゆうのってマンガやドラマで良くある。
学生同士のカップルが、安いけど可愛らしい指輪を買ってやるって言うシーンだ。
ベタだけど女としちゃちょっと憧れる。
「お♪これ可愛いじゃん」
そう言って戒が手に取ったのは、大きな花のコサージュがついたヘアゴムだった。
てか指輪じゃないんだな…
ま、こいつに貰ったところで、あんま嬉しかないんだけど。
「ホントだ。でもそんなのあたしには似合わないよ」
あたしは苦笑い。
だって戒が手にしたのはいかにも女の子っていう可愛らしいヘアゴムで、男っぽいあたしに似合うはずもない。
「そんなことないよ~、彼女せっかく可愛いんだからもっとお洒落しなよ」
と商売上手な兄ちゃん。
お世辞と分かっててもちょっと嬉しい。
「彼氏も可愛い彼女にプレゼントしてあげなよ」
「う~ん。これもう少し下がらん?勉強してくれたら、ちょっと考えるわ」
戒が兄ちゃんを見てにこにこ。
その笑顔の裏側がどす黒い。
ってか値切るなよ。



