戒は不機嫌オーラを出したまま、あたしをじろりと見下ろした。


「龍崎 琢磨が俺を養子にしたのは、俺の立場を安全なものにするためだ。敵の白虎でも青龍会会長の息子であれば手出しできねぇからな」


「あぁなるほどね!」


あたしはぽんと手を打った。


じゃぁキョウスケは?


あいつが来たのは1年ぐらい前だから、盃の話はあたしが想像するよりもずっと早くから出てたことなのか?



一つ……疑問が解消されても、また一つと浮上してくる。


あたしの中にまだまだ解消されてない疑問が底の方でくすぶっていた。


あたしは歩いていた足をぴたりと止めて、そのまま歩いていく戒の後姿に向かって問いかけた。






「でもさ、あんた叔父貴が好きなんだろ?前に黄龍に惚れてるって言ってたもんな。


あれは叔父貴の強さや頭の良さが好きだって言う意味?だってあんたストレートなんでしょ?恋愛感情じゃなかったってわけ?」



戒がちょっと前で止まるとゆっくりと振り返る。



その顔に、メガネの柔らかい笑みでもなく、虎間の意地悪な笑みでもなく







思わずドキリとさせられる色っぽくて、意味深できれいな笑みが―――浮かんでいた。



金色に光った目の中に黒い瞳孔が細く、縦に走っている。




虎の目だ。








「“黄龍”には今でも変わらず惚れてますよ?」