「このっ!猫被り!!」


「お!うまいこと言うな。虎もネコ科だぜ」


戒はあたしの言葉にもちっとも堪えてない様子。呑気にアイスコーヒーを一口すすると、鞄の中からタバコを取り出した。


「話、長くなるんだろ?」


と言いながら一本取り出し慣れた手つきで火を点ける。


「てめっ!未成年がタバコ吸ってんじゃねぇよ!!ばっかやろう!」


あたしは戒の口からタバコを取り上げると灰皿に、ついたばかりのタバコを押し消した。


戒は「意外」という風に目をぱちぱちさせてあたしを見てくる。


「あんたも吸ってるかと思った」


「吸うか!ボケっ!!あたしは身も心もクリーンなんだよっ!!」


「へぇクリーンねぇ」


戒はちょっと含みのある顔をしてくっと笑う。


な、何かこいつ…掴めないところがあってちょっと苦手と思う反面、こいつの一つ一つの表情がメガネとは全く異なって、って言うか何て言うの?


こいつが妙に色っぽく見えてしまうのは。


ちょっとドキリとしてして、


「わ゛~~!!何考えてンだ、あたしは!!」


消えろ!黒い考え!!イケナイ感情を振り払おうとしてあたしはわたわたと手を動かした。


くっ、と戒がまた笑う。


「面白れぇ奴」


「何が面白れぇんだよ」


あたしは戒を睨んだ。


でもこいつはちっとも応えてない様子。


「ってかお前…トレードマークのメガネなしで大丈夫なのかよ」


「あー、あれ度が入ってないから」


「じゃぁ何でメガネなんてかけてたんだよ!?」


「だってメガネあるといかにも優等生ってカンジじゃない?」


戒は悪意のない笑顔でにっこり笑ってあたしを見てきた。




ぐぬぬ…と息を呑んであたしはひるまないよう、顎を引いた。