男の口元の笑みが消えた。
まるで拭い去るようにきれいにその表情が消え去った。
「だったらどないするん」
虎間がちょっとめんどくさそうに答える。
どうするって―――考えてなかった!!!
でもっ!!
聞きたいことは山ほどある!
「とっ捕まえて、あれこれ吐かせてやるよ」
虎間はくっくっと低く笑うと、
「えらいこっわいお嬢さんやな。まぁ捕まえられるンなら捕まえてみぃ」
とまた不敵な笑みを浮かべる。
「やってやるよ!」
あたしは走り出した。
それと同時に地面に転がっていた男がむくりと起き出す。
「お前も仲間だったんか!!?」とあたしを見て大声を出すと、懲りずに拳を振り上げあたしに向かってきた。いつの間に出したのか、手には切れ味の良さそうなナイフを握っていた。
「ちっ」
あたしは小さく舌打ちすると、素早く向かってくる男の後ろに回りこんだ。
男の腕を捻りあげると、脇の下から脚を振り上げ手に持っていたナイフを蹴落とす。
カランっとナイフが小気味良い音を立てて地面に落ちた。
「お~♪やるなぁ」
虎間がボンネットの上で楽しそうに声を上げると、軽く手を叩いた。
てっめぇ!見てないで助けやがれっっ!!
怒りがふつふつと沸いてきて、あたしは男のもう片方の腕を押さえ込むと、男の背中をぐっと逸らさして膝蹴りを入れた。
「ぐっ!!」
男が呻いて力が緩んだのを確認すると、あたしは身を翻して男の頭を掴み、車の窓ガラスに叩き付けた。



