「リコ、走るよ。自転車に乗って」


あたしはリコの手を緊張した面持ちで掴むと、背後の人間に気づかれないよう声を潜めた。


「え?どうしたの?」


「いいから!」


リコが自転車に乗っているのを待っていられない。


敵はすぐ近くに迫ってきている。


あたしは乱暴にリコの手を引くと、走り出した。


「え!ちょっ!!朔羅!!」


自転車がリコの手から離れて派手な音を立て横倒しになる。


何が何だか分からないようだが、リコはあたしの只ならぬ剣幕に押されたように走り出した。


あたしたちが走り出したと同時に、背後の足音が急に音を立て始めた。


どうやらあたしたちを追ってくるようだ。


「え?何!?」


リコがようやく状況を把握したのか、声を振るわせる。


ただの痴漢じゃない。それよりもっと性質の悪い強盗か、強姦魔かもしれない。


「急いで!」


あたしはリコの手を引っ張り先を急がせた。


突き当たりはT字路になっていて、そこを左に折れるとあとはひたすらまっすぐ走るだけ。


その先は駅に繋がっている。


早く!


あたしたちはT字路に差し掛かった。


そのとき前方からパッともの凄い強さの光を感じ、あたしは目を背けると脚を止めた。