会社のモンに送らせる、と言って叔父貴は車を用意してくれた。
黒塗りのセルシオの後部座席に二人で乗り込んだ。
運転手さんは、組のもんじゃないけど叔父貴が会社を立ち上げた当時からいるお抱えの運転手さんで、後部座席の話には一切口を挟まないし、聞いていないふりをする。
ここであったことは、彼の胸の中に収められてるってことだ。
この初老の運転手さんは、一体いくつの秘密を抱えてるのだろう。
暴露本を出したらかなり売れると思うが。
今日のは特に激しい内容になりそうだ。
「なぁメガネ」
あたしは滑らかに発車したのを確認すると腕を組んで、隣の席に済まし顔で座っているメガネを見た。
死体男からメガネに格上げだ。ありがたく思え、この野郎!
「あんた叔父貴がどういう人かしってんのか?」
「知ってるよ。ヤクザでしょ?」
メガネはにっこり微笑んでいった。
う゛!
このヤロゥ。爽やかじゃねぇか。
「あんたどう見てもカタギだよな。何で叔父貴の養子になんかなったんだよ」
「妬いてるの?可愛いね」
はぁ!?誰がお前に妬くって!!!
てか可愛いとか言うな!
てか話をすり替えんじゃねぇ!!!



