「龍崎 戒(リュウザキ カイ)です。よろしく」




え……龍崎って?



「偶然?お前と一緒の苗字だぜ」


すぐ後ろの席で千里があたしをつついた。



「あ……あぁ」


あたしは曖昧に返すことしかできなかった。





偶然―――?



このときあたしにはただの偶然に思えなかった。



何か狡猾に裏で糸を引かれているような……



不穏で、不吉な予感を感じ取っていたんだ。





だけど、それがやがて“あたしたち”の運命を大きく変えるとは




そのときのあたしには



分からなかった。